両立支援シンポジウム/セミナー
岡山 治療と仕事の両立支援セミナー
- <開催日時>
-
2019年12月5日(水)
13:30 - 16:20 - <場所>
- イオンモール岡山5F おかやま未来ホール
- <主催>
- 厚生労働省/岡山労働局
- <共催>
- 岡山県地域両立支援推進チーム
岡山労働局局長 谷中善典
中国労災病院 治療就労両立支援センター 豊田章宏氏
株式会社山陽マルナカ 経営管理本部 人事部部長 西面和巳氏、
人事労務グループ 山元雅代氏
株式会社ショウワコーポレーション 総務部 法務担当部長 藤木徹氏
岡山大学病院 総合患者支援センター 医療ソーシャルワーカー 宮本和子氏
岡山労災病院 看護部 がん看護専門看護師 坂井淳恵氏
岡山産業保健総合支援センター 副所長 金武邦洋氏
中国労災病院 治療就労両立支援センター 所長 豊田章宏氏
基調講演
中国労災病院 治療就労両立支援センター 所長 豊田章宏氏
豊田氏は、両立支援をワーク・ライフ・バランスの一環としながらも、医療情報やまとまった休み・職場の理解が必要であるという特殊性があること、また医療・職場・患者の生活背景など困りごとはさまざまであるため、それぞれの落とし所を見つけることが大切であるとし、企業・医療機関との橋渡しや患者の伴走者の役割を「両立支援コーディネーター」が担うと説明。職場が取り組むべき環境整備として、労働者が安心して相談・申出を行える相談窓口の明確化と担当者の配置、働き方を規制すべきものと規制になじまないものに分けて整理することがあるが、そもそも働き方を職場で議論できる環境とマネジメントが重要であり、さらには労働者自身の自己管理能力も必要であると説明した。また、職人(専門職)の世界を取り上げ、仕事と生活の両方を融和させて楽しむ「ワーク・ライフ・ブレンド」という働き方を求める人もでてきており、「極めるよりも普通に働きたい」という時流の中、後継者が育たないという現状に触れた。その上で、病気を患っても「働きたい」という意欲がある者を活かすことの必要性を説き、「働き方もパラダイムシフトが起きている。企業も、働かせ方自体(働き方の概念)を変えていかなければならない」と締めくくった。
各企業・医療機関の取組
株式会社山陽マルナカ 経営管理本部 人事部部長 西面和巳氏、人事労務グループ 山元雅代氏
中国・近畿エリア内で地域密着型のスーパーマーケット「マルナカ」62店舗を展開する同社は、従業員の高齢化に伴い、通院・入院と勤務(就労)が切り離せなくなってきたこと、そして治療しながら復職できる人が増えてきたことから、両立支援の取組を開始。休職の有無により違いはあるが、どちらにも社内の独自書式があり、その活用によって主治医の意見を聞き、必要に応じて職場復帰の可否、就業時間・配置などの検討を行っている。また、従業員を最も把握している各店舗の事務員が相談窓口となり、社内・外部医療関係者や従業員の家族とも連携。山元氏は「両立支援を進める際、会社が知りたいのは配慮すべきことは何かということ。仕事の状況を主治医に詳しく伝えることで詳細なアドバイスがもらえるし、治療に関する正確な情報を把握することもできて、適切な配慮ができるようになる」と語った。
株式会社ショウワコーポレーション 総務部 法務担当部長 藤木徹氏
岡山県美作市に本社を置き、従業員800人を抱える同社が両立支援に取り組むきっかけとなったのは、1人の社員ががんに罹患したことだという。藤木氏は両立支援に関するセミナーに参加した経験から、「両立支援の進め方について産業保健総合センターに相談し、具体的な助言・指導を受けながら、本人の意向確認、仕事内容・雇用形態の見直し、主治医・ソーシャルワーカー・産業医らとの情報共有を行いました」と説明。このことをきっかけに、休職期間に関する社内規定の見直しも実施。藤木氏は今後の課題として、「管理職が認識を高めること」「社員全員が身近な課題だと捉えること」「有期雇用の派遣社員に対しても休職規定の適用を拡大すること」の必要性を感じているとし、「これからも皆がお互い様という思いを持てるよう、安心して働ける環境づくりを推進していきたい」と締めくくった。
〜岡山大学病院の事例について〜」
岡山大学病院 総合患者支援センター 医療ソーシャルワーカー 宮本和子氏
がん診療連携拠点病院である同院には、がん相談支援センターが設置されており、同院受診の有無にかかわらず、誰でも無料で相談が可能。両立支援・就労支援に関して寄せられる案件・対応策の多くは、経済的な問題への支援(社会保障制度の活用)、職場との関係調整となっている。過去、乳がんを再発したことから、作業時のしんどさ・下肢の痛み・体重減少を訴えていたという女性のケースでは、継続して働けるようにするべく、相談を受けたソーシャルワーカーが主治医・産業医・職場らの間に立って情報共有を促した。宮本氏は「主治医・産業医・職場が、治療情報や体の状態などの情報を随時提供し合うことが大切。事業者には、共に共通理解を形成していくことをお願いしたい」と語った。
岡山労災病院 看護部 がん看護専門看護師 坂井淳恵氏
同院には、治療就労両立支援部が開設されており、両立支援に関するさまざまな相談に対応している。坂井氏はこれまでの対応事例から、「退職を迫られた人はおらず、支援に協力的な企業も多い。特に産業医の関わりがある企業では、復職への理解が進んでいる印象を受け、職場も一生懸命支援を行っている」と所感を述べた。さらに「病院では患者さんの同意の下、企業からの相談にも応じており、病状や見通しなどを伝えることができるため、ぜひ活用してほしい」と参加者に呼び掛けた。
岡山産業保健総合支援センター 副所長 金武邦洋氏
同センターでは、両立支援に関する相談対応を事業場の規模にかかわらず無料で実施。事業場の人事労務担当者・産業保健スタッフを対象とした両立支援セミナーや研修会では、両立支援のガイドラインの解説などを通して企業の取組を促進している。個別訪問支援では、両立支援促進員が事業場を訪問し、事業場の特性に合わせた両立支援規程・制度の整備など、環境づくりや進め方に対して助言を行う。また、個別調整支援としては、治療しながら働く労働者や事業場からの申出に応じ、両立支援促進員が支援。事業場・医療機関との情報共有の上、体制整備に関わる支援から復職プランの策定支援、職場での配慮や健康管理などに対するアドバイスまで、幅広くサポートしている。最後に金武氏は「産保センターのご利用をお待ちしています」と呼び掛けた。
セミナー総括
取組事例発表の後には、基調講演を行った豊田氏が登壇。豊田氏はこの日の登壇内容を一つ一つ振り返った上で「両立“支援”と似たような言葉に『援助』という言葉がありますが、『災害援助』などの言葉が示すように援助とは“する側”の一時的な立場から出てくる言葉。一方『支援』は“受ける側”の立場。すなわち『自立支援』であり、受ける側が自分で立てるように支援することが、両立支援の真の目的だと思います」と総括した。
(左から)中国労災病院 治療就労両立支援センター 所長 豊田章宏氏、岡山大学病院 総合患者支援センター 医療ソーシャルワーカー 宮本和子氏、株式会社山陽マルナカ 人事労務グループ 山元雅代氏、株式会社山陽マルナカ 経営管理本部 人事部部長 西面和巳氏、株式会社ショウワコーポレーション 総務部 法務担当部長 藤木徹氏、岡山労災病院 看護部 がん看護専門看護師 坂井淳恵氏、岡山産業保健総合支援センター 副所長 金武邦洋氏