厚生労働省

治療と仕事の両立支援ナビ

両立支援の取組事例

主治医、がん相談支援室、職場、産業保健総合支援センターと
連携を図りながら治療と仕事の両立を支援

長崎大学病院

がん診療センター 相談支援部門長 川崎 浩二氏

会社名
長崎大学病院
所在地
長崎県長崎市
事業内容
医療機関
設立
1857年11月
従業員数
2,489名(2021年4月現在)

長崎大学病院は西洋式の病院として日本で最も長い歴史を持ち、被爆し復興した唯一の大学病院です。がん診療センターを設置し、主治医、がん相談支援室(両立支援コーディネーター)、職場(人事担当部門・産業医)、産業保健総合支援センターと連携を図りながら、がん患者に対する両立支援を行っています。

何がきっかけで患者さんの仕事と治療の両立支援に取り組まれたのでしょうか?

2017年12月に厚生労働省労働基準局の労働衛生管理官から両立支援に関するお話を伺う機会があり、2018年3月、福岡労働局労働基準部と福岡産業保健総合支援センター主催で開催された「両立支援に係る拠点病院連絡会議」にオブザーバーとして出席し、先進県である福岡の両立支援の実情について学ぶ機会がありました。平成30年度診療報酬改定において治療と仕事の両立支援に関する診療報酬(療養・就労両立支援指導料)が新設されることになり、2018年8月の長崎県がん診療拠点病院研修会において、「産業医科大学における治療と就労の両立支援」講演を聴講したことがきっかけとなりました。

企業との連携方法をお聞かせください。

両立支援を開始する際には企業宛に支援内容、担当者、連絡先等が記載された文書を送付するとともに、問い合わせ窓口を明示しています。
(必要に応じて、電話・メール・直接面談で連携を図っています。)

患者さんに院内の両立支援の取組をどのように周知されていますか?

労災疾病臨床研究事業費補助金「医療機関における両立支援の取組に関する研究」の分担研究として、長崎大学病院に入院予定の患者に対して2019年1月から12月の間に厚生労働省が作成した両立支援チラシならびに当院で作成した就労・両立支援チラシを配布したところ、2019年1月~12月の両立支援相談件数は32件で、2018年の同期間の19件と比較して、約1.7倍増加しました。
また、がん診療を行う外来診察室に、当院のがん相談支援センターのリーフレットを置いてもらい、主治医から患者さんにリーフレットを渡して、両立支援も含めた色んながんに関する相談を受けるよう声をかけてもらっています。
外来化学療法室において外来初回治療患者を対象にオリエンテーションを実施しています。患者さんが就労している場合は現在の就労状況や職場とのやり取りが円滑に行われているかなどを確認し、必要に応じて両立支援の概要説明や問い合わせ先を伝えています。

両立支援の実例・実績をお聞かせください。

①治療と仕事へのモチベーションのサポートが必要となった事例(難病患者)
企業側より両立支援の依頼があった患者さんの実例です。企業から本人を現場の仕事から事務職へ配置転換する提案があったため、主治医へ両立支援の説明と意見書作成依頼を行いました。主治医の意見としては、現在は事務職のみが望ましいこと、病状が安定している場合には期限付きで現場へ戻すことを条件として経過をみることを本人と職場の保健師等へ説明しました。また、本人はやりがいがあり、好きな仕事である現場への復帰を希望していましたが、現在は易感染状態であるため、良好な環境下での事務職勤務が望ましいことを助言しました。企業側の保健師には本人来院時に聴取した本人の気持ちや病状等を共有し、本人と企業側でも今後の方針のすり合わせを定期的に行っていただくよう依頼しました。
②主治医の意見、患者の意向がかなえることができた両立支援の事例(がん患者)
院内スタッフより依頼があった患者さんの実例です。管理職であり業務過多な傾向であったため、病気を機に体を第一に考えた働き方を希望されていました(本人は県外で勤務していましたが、加療のため実家のある長崎でリモートワーク勤務を行っていました)。主治医が両立支援について説明を行い、患者の同意を得たうえで、当院から患者の病状、患者さんの意向、両立支援を行う旨を企業側に伝え、患者さんと企業側の産業医が十分な面談を行い、当院で治療を継続しながら県外勤務の復帰を行うこととなり、企業側が両立支援プランを策定し(復帰の前後2回)、当院主治医と共有しました。

今後の展望・課題をお聞かせください。

院内の医療スタッフ等(特に主治医や看護師)を対象とした研修会等を開催し、両立支援の周知の促進や『両立支援コーディネーター基礎研修』の修了者を増やし、両立支援に携わるスタッフの専門性と質を高めたいと思います。
また、復職することがゴールではないため、復職後も継続したサポートが行える体制を構築したいと考えています。

取組事例一覧