両立支援の取組事例
顧問契約を締結した社会保険労務士による
就労個別相談会を開催
社会福祉法人 三井記念病院
- 会社名
- 社会福祉法人 三井記念病院
- 所在地
- 東京都千代田区
- 事業内容
- 医療機関
- 設立
- 1909年3月
- 従業員数
- 1,306名(2021年4月現在)
1906年の創立以来、最新・最良の医療を提供する環境を整えるとともに、2016年には国際的な医療施設認証機関であるJCIの認定を取得し、100年以上にわたり「臨床の三井」として安全で質の高い医療を実践し、社会に貢献しています。
医療ソーシャルワーカーは以前から療養中の患者さんの仕事に関する相談に応じていました。
2012年、がん対策基本法に基づいて策定されたがん対策推進基本計画(第2期)において、「がんになっても安心して暮らせる社会を目指すために、働く世代の就労の課題に取り組むこと」が盛り込まれたことがきっかけとなり、社会保険労務士と顧問契約を締結し、社会保険労務士による就労個別相談会を開催し、がん患者さんの相談に応じることにしました。
相談窓口は、がん相談支援センターと地域福祉相談室が担っています。取組当初はがん患者さんを対象にしていましたが、がん以外の患者さんも仕事と治療の両立に関する課題を抱えているために窓口を拡げました。医師や看護師など当院スタッフに促されたり、院内掲示やホームページをご覧になった患者さんやご家族が相談に来られます。
職場の方との連絡は患者さんご本人が直接なさっており、相談支援担当者は患者さんが具体的に誰とどのように話すかを一緒に考えています。もちろん患者さんからのご希望があれば、相談支援担当者が職場や産業保健スタッフとの連携をとることができます。
ポスター掲示、リーフレット配架、ホームページを配架しています。また外来受診や入院時のスクリーニングシートに「仕事に関する相談希望の有無」欄を設け、ご希望者に対応できるようにしています。
30代、がん患者Aさんの事例です。相談場面で、「がんと言われて、頭が真っ白なまま入院しました。先生や看護師さんからどんな病気で、どんな副作用なのかを、説明をしてもらっているのですがフワフワした感じでよくわかりません。治るのだろうか?お金がかかるのだろうか?仕事は続けられるだろうか?職場にどう話したらいいのだろうか?治らなかったらどうしよう?私、これからどうなるんだろう?」とAさんはゆっくりとご自身のペースで話してくださいました。相談支援担当者の医療ソーシャルワーカーは、共感的態度で傾聴し、Aさんの課題を、①身体面、②社会面、③心理面の3つの側面で、ともに整理しすることを提案しました。
①身体面では、病気や症状、治療内容、副作用、治療スケジュール。
②社会面では、仕事内容や就業規則、企業文化、上司同僚との関係性、就労継続の意向。
③心理面では、具体的対処で軽減する不安、見通しが立たないことで感じる不安を明らかにしました。
その上で、看護師や社会保険労務士と協働し、①②③に関する状況把握と対処をさらに明確にしていきました。そしてAさんは、職場の上司と人事担当者との話し合いの場を設け、治療スケジュールを伝え、治療継続していても従来通りできることと、職場の配慮(例えば出退勤時間や勤務時間、受診日の休暇取得、休憩場所の確保など)があれば勤務できることを伝え、短時間勤務から徐々に復職していくことができました。Aさんは配慮してくれる職場の同僚にお詫びではなく、感謝の言葉を適時述べられ、職場もAさんに対する配慮に慣れていきました。また、職場復帰と並行し、同病の患者はどのように仕事をしているのかという問いがあったため、患者会を紹介したところ、Aさんは定期的に参加し、同じ病気の患者さん同士の心理的交流がさらに生活の活力となったようでした。Aさんは「がんになる前と同じように100点では働けないけれど、70点で納得しながら仕事しています。」と教えてくれました。
引き続き対象疾患を拡げて取り組んでいきたいと思います。具体的には、脳卒中、肝疾患、難病、糖尿病、心臓血管疾患、精神疾患などです。薬物療法や後遺症への対処をしながら、就労継続なさっていたり、退職や復職の課題を有する方々の相談に応じていきたいと思います。
また、患者さんの働き方やキャリアの構築・再構にも焦点を当てた支援を行いたいと考えています。就労継続や再就職だけでは働くことの目的が叶うことはなく、自分自身のキャリアについて見つめなおし、再構築することが必要になると考えます。そのためにも様々な専門職と協働して、両立支援に取り組んでいきたいと思います。