両立支援の取組事例
「休業者支援プログラム細則」を制定し、安心して働き続けられる環境を整備
株式会社ツムラ
- 会社名
- 株式会社ツムラ
- 所在地
- 東京都港区赤坂二丁目17番11号
- 事業内容
- 製造業
- 設立
- 創業:1893年4月10日 / 設立:1936年4月25日
- 従業員数
- 連結従業員 4,032名 単体:2,631名(2023年3月現在)
- 平均年齢
- 43.1歳(2023年3月) /男女比 男性8:女性2
- 産業保健スタッフ
- 4名(常勤保健師3名、看護師1名) 非常勤産業医:22名
1893(明治26)年の創業以来、「良薬は必ず売れる」という信念を貫いてきました。経営理念「自然と健康を科学する」、企業使命「漢方医学と西洋医学の融合により世界で類のない最高の医療提供に貢献します」を掲げ、理念に基づく経営を実践しています。
1976年にツムラ医療用漢方製剤が薬価基準に収載され、今では漢方製剤は医療の場に欠かすことができない存在となりました。現在は129品目が薬価基準に収載され、医療現場でその有用性が高く評価されており、国内市場における医療用漢方製剤において、80%以上のシェアを占めています。
2017年に「ツムラ健康宣言」を制定し、これまで以上にヘルスリテラシーを高め、従業員の健康づくりを支援する方針を掲げました。
毎年、定期健診はほぼ100%近い受診率でしたが、がんやうつ病で休職する人がおり、中には離職を選択するという事例もあり、両立支援の必要性を強く感じ、段階的に両立支援に取り組むようになりました。
2017年に休業者支援プログラムを制度化、2018年就業時間内禁煙を規則化、2019年人事部健康推進課を設置し、休業者の支援を継続しています。
就業規則に休職のルールがあり、従業員誰もが病気になっても安心して制度を利用できるようにしています。2017年に制定した「休業者支援プログラム細則」もあり、そのルールに則って、本社、事業所、工場など、どの職場でも同様の支援ができるようにしています。
がんなどに罹患して7日以上休職が必要になった時には「傷病欠届」を提出する規則ですが、休業にあたっては人事総務担当者が面談を実施し、休業等の期間やその間の経済的サポートなどについて説明します。焦って復職しようとする人も少なくないので、丁寧に説明することを心掛け、本人の不安を取り除き、しっかり治療に向き合ってもらうようにしています。
「休業者支援プログラム」は復職後、段階的に労働時間を増やしていく制度です。1か月以上の休業または産業医が必要と判断した場合は1か月未満でも利用できるようにしています。復職時に主治医の診断書を踏まえ、産業医が面談をして復職の可否を判定します。そして産業医の意見を基に本人、上長が話し合い、「復職プログラム」を作成します。復職プログラムの流れとしては「復職スケジュールの作成→産業医面談→部門長の一次判定→人事部長の二次判定」を経て職場復帰が円滑に進められるようにしています。プログラムのスケジュールは、3か月間が目安です。第一クールは2週間10:00~15:15(工場では半日勤務)のコアタイム勤務、第二クールの2週間は9:00~15:15または10:00~17:45、第三クールの2か月間は所定時間勤務(残業、出張、休日労働など禁止)で、通常時間勤務に戻していきます。
「休業者支援プログラム」制度の導入間もなく進行胃がんに罹患し、定年まで数年という時期であり自身が病気になるまで制度のことも十分に理解していなかったため、退職も検討されたという事例がありました。復職及び復職後の通院を含めた就労には不安がありましたが、「復職プログラム」利用で体力回復の時間があったこと、時短勤務でも会社とつながっていることの安心感、職場の方からの励ましで定年まで両立できました。
2022年よりGLTD制度を導入し、休職後の傷病手当(東京薬業健保に申請)は月給の6割程度が支給され、GLTD制度で休職中の経済的サポートを実施しています。
茨城工場では2021年より外部支援策の一環でキャリアコンサルタント資格者との「モヤモヤ相談会」を開催しています。「モヤモヤ相談会」では仕事の悩みや健康上の悩みを第三者と相談し、客観的に判断してアドバイスをいただいています。若手社員を中心に一人60分相談会を実施しています。
2022年より、女性従業員の婦人科検診(乳がん検診、子宮頸がん検診)費用について自己負担なく受診できるようにしています。
また、婦人科検診受診率のアップと、婦人科がん知識向上の教育目的のため、HPV検査を導入し、全世代の女性社員が婦人科検診を受けられる体制を整えています。
がん、心血管系の重症疾患、精神疾患など長期の休業が心配される病気になっても、治療に向き合える期間のサポートと復職後の支援もあり、病気になったご本人、ご家族に説明すると「この会社の制度はすごい、安心して治療に専念できます」との言葉をいただくなど、離職抑制につながっています。
茨城工場では管理職が部下の変化を把握し、早めに保健師に相談してくれるようになり、休暇前に本人と面談できることがとても多くなりました。面談できることで不安に思っていることや制度のこともお話しができ、手厚い支援につながっていると感じます。
就労平均年齢が43.1歳ということもあり、がんへの罹患や生活習慣病が重症化するリスクに備え、両立支援制度の整備が必要でした。貴重な人財を失ってしまうと会社は大きな損失となりますので、制度をしっかり周知すること、特に管理職には部下から相談を受けた時点で回答できるように管理職研修で教育しています。
将来的には個々の事情にあった働き方ができるように、例えば罹患した従業員の家族のサポート、家族ががんに罹患してしまった時の従業員の支援なども考えていきたいと思います。