厚生労働省

治療と仕事の両立支援ナビ

両立支援の取組事例

「人は財産」であるという考え方に基づく離職者を出さない環境作り

鳴海製陶株式会社

管理部門 業務部 業務課 課長 中村哲治氏

会社名
鳴海製陶株式会社
所在地
愛知県名古屋市
事業内容
製造業/陶磁器テーブルウェア、及び超耐熱結晶化ガラス製品の企画・開発・製造・販売
設立
1950年12月
従業員数
250名(2021年10月現在)
平均年齢
46歳/男性6:女性4
産業保健スタッフ
衛生管理者3名 、外部委託産業医1名

1946年創業の高級洋食器と超耐熱結晶化ガラスを扱うメーカーです。
極めて困難といわれたボーンチャイナの生産に挑戦し、日本で初めて量産化に成功したボーンチャイナのリーディングカンパニーです。
NARUMIは強いこだわりをもって、高品質な商品を作り続け、市場で高く評価されています。
2020年に健康経営宣言をし健康改善につながる活動を推進しています。

何がきっかけで治療と仕事の両立支援に取り組まれたのでしょうか?

当社ではがんや成人病を患い、治療を必要としながら仕事をする人も増えてきました。また、働き手の減少が話題になっていますが、当社も例外ではありません。働きながら病気の治療ができる環境を会社が作り、一人でも離職者を減らすべきだと考えたのがきっかけでした。

両立支援に取り組む基本的な考え方や基本的な方針を示したものはありますか?

基本的な考え方は「人は財産」であるということです。当社では人材の「材」をあえて財産の「財」の字を用い、人は最も大切にすべきであることを示しています。会社はそこで働く一人ひとりがそれぞれの役割を果たすことで事業が成り立っています。これまで会社のために貢献してきた全員を大切にすることが必要です。
この基本的な考え方に基づき、以下に挙げる3つの方針を示し取り組んでおります。
①「離職者を出さないこと」です。治療が必要な人が出ても離職者を出さないことで従業員の雇用を守り、社会に対しても責任を果たすことが重要と考えています。
②「人に合わせた支援」です。治療が必要な人の症状に合わせ、支援体制をつくり対応する事です。
③「雇用形態に関係なく支援すること」です。正社員、契約社員など雇用形態に関係なく同じ支援を行うことです。

具体的な両立支援の仕組みや支援制度をお聞かせください。

両立支援を行うための組織体制と流れは以下のとおりです。
「職場・上司」「管理部門」「健康保険組合」「主治医」「産業医」が、治療を必要とする従業員から得た情報をもとに連携、共有し、以下のとおり各担当者と相談や面談を行っています。
①従業員が上司に相談。職場の上司は管理部門と連携し従業員の相談を受けます。
②管理部門は症状、治療が必要になる期間等を確認します。治療が必要な期間に対しては、休みを取る必要があります。治療に専念できるよう休みの取り方のアドバイスをしています。
③当社には、健康保険組合がありますので、傷病手当の制度について説明しながら相談者が休みを取得する際のイメージ作りができるよう支援します。また、治療に関する費用面や社会保険に関しても相談ができます。
④治療で休んでいた場合の仕事への復帰については、治療を受けている病院の主治医に対して「主治医意見書」を用いて、復帰の時期や復帰に関して留意が必要なことなど、会社が配慮すべき点について意見を求めます。
⑤主治医の意見書をもとに産業医と面談を実施した上で復帰を決定します。

両立支援につながる制度は以下に挙げる6つです。
①フレックスタイム制度
製造部署を除く全ての職場を対象に2021年1月よりコアタイムを廃止し、7:00~22:00で自由に働く時間を決められるよう改定しました。
②半日有給休暇制度
午前休、午後休の半日単位での有給休暇の取得ができます。
③積立有給休暇制度
2年で消化できなかったために失効する法定の繰り越し有給休暇日数を最大30日間積立有給休暇として使用できます。傷病等で休みが必要な場合に取得可能です。
④在宅勤務制度
事前に申請があれば在宅で勤務が可能です。PC・スマートフォンの貸与やVPNネットワーク環境構築を整備します。
⑤短時間勤務社員制度
復帰する人に合わせフレキシブルに勤務時間などを調整します。
⑥育児看護休暇・介護休暇制度
ご家族で育児看護や介護が必要な場合に5日間の特別有給休暇が取得できます。

実際に両立支援された具体的事例はありますか?

乳がん手術のため2週間休んだ後に復職。2年半後、乳房再建で1か月休暇を取得。手術の時は積立有給休暇があることで、退院後の通院のために有給休暇がなくなることもなく安心して休むことができました。また、通院には半日有給休暇も利用しながら効率よく休みを取得しつつ、仕事との両立を行うことができました。業務復帰の際は誰かに負荷をかけてしまうことに葛藤と不安がありましたが、治療と仕事の両立のために準備してきたことを職場の上司、同僚に理解、協力してもらえたことで、不安なく治療に専念することができました。

今後の展望・課題をお聞かせください。

■今後の展望
弊社は2020年に健康経営宣言をしました。現在は健康経営優良法人の認定を目指しています。課題にも挙げた健康改善につながる活動を推進するとともに、その成果として業務の生産性向上にもつなげていきたいと考えています。
■今後の課題
①仕事復帰後に様々な理由による不安に対するメンタル面でのケアです。「人は財産」のとおり、仕事復帰後もコミュニケーションをとりながら、対象者に寄り添い対応することが重要です。
②病気にならないための予防です。「メタボ」の人には産業医との面談により食事のとり方の指導を受けてもらい、その他運動の促進や喫煙者の減少など健康改善につながる取組を推進します。

取組事例一覧